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2026.09.28Blog

最低賃金は10月から全国平均1,177円へ──中小企業が今見直す3つのこと

最低賃金の改定額が全都道府県で答申され、令和8年10月1日から順次発効します。全国加重平均は1,177円、引上げ額は56円です。人件費が確実に上がる局面で、中小企業の現場は何から手をつけるべきでしょうか。この記事では、今回の改定内容と社会保険の加入対象の広がりを公的資料で確認したうえで、時給表を直すだけで終わらせないために、いま見直しておきたい3つのことを整理します。発効日が目前に迫った今週こそ、確認どきです。

令和8年度の最低賃金改定、決まったのはこの内容

厚生労働省の発表によると、令和8年度の地域別最低賃金は全都道府県で改定額が答申され、47都道府県で54円〜65円の引上げとなりました。改定額の全国加重平均額は1,177円(前年度1,121円)で、56円の引上げは、昭和53年度に目安制度が始まって以降で2番目の高さです(厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」)。

| 項目 | 令和8年度 | 前年度 | |---|---|---| | 全国加重平均額 | 1,177円 | 1,121円 | | 引上げ額(全国加重平均) | 56円 | - | | 引上げ額の幅 | 54円〜65円 | - | | 最高額 | 1,280円 | - | | 最低額 | 1,085円 | - |

実務で最も注意していただきたいのは、発効日が全国で同じではないことです。答申された改定額は、異議申出に関する手続を経て都道府県労働局長が決定し、令和8年10月1日から令和8年12月2日までの間に順次発効される予定です。

つまり、10月1日から適用される県と、11月以降になる県があります。最低賃金は会社の本社所在地ではなく、従業員が実際に働いている事業場の所在地の金額が適用されます。複数の県に店舗や拠点がある場合は、拠点ごとに金額と発効日を確認する必要があります。正式な金額と発効日は、厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」でご確認ください。

「106万円の壁」も動きます──社会保険の加入対象の広がり

今回の改定は、パート・アルバイトの社会保険にも関わってきます。短時間労働者が社会保険(健康保険・厚生年金保険)の対象になる要件には、週の所定労働時間が20時間以上であること、学生でないこと、所定内賃金が月額8.8万円以上であること(賃金要件)などがあります(厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト)。

このうち賃金要件(月額8.8万円以上)は撤廃されることが決まっています。厚生労働省は、撤廃の時期について「法律の公布から3年以内で、全国の最低賃金が1,016円以上となることを見極めて判断する」としています。時給1,016円で週20時間働くと、年額換算で約106万円になるためです(厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」)。

ここで今回の改定額を重ねてみてください。最低額が1,085円ですから、改定後はすべての都道府県で1,016円を上回ります。週20時間以上働く方は、時給が最低賃金水準であっても賃金要件を自然に満たす、ということです。あわせて、従業員50人超という企業規模要件も、令和9年10月1日から令和17年10月1日までの間に段階的に撤廃されることとされています。

賃金調整で加入を回避する、という考え方が成り立たなくなっていく流れです。だからこそ、人件費の話を「単価をいくらにするか」だけで考えるのではなく、「同じ仕事に何時間かかっているか」から考え直す価値があります。

人件費が上がる局面で、中小企業が見直す3つのこと

日本商工会議所が令和8年9月15日に公表した「多様な人材の活躍等に関する調査」では、人手不足と回答した企業は60.0%、そのうち約半数(48.2%)が事業運営に影響・支障をきたす深刻な状況にあると報告されています。人手不足への対策としては、採用強化に次いで「デジタル活用等による省力化」が約4割(40.2%)と多く挙げられました(日本商工会議所「多様な人材の活躍等に関する調査」)。

同調査では、企業規模が小さいほど省力化と答える割合が下がり、従業員20人以下では「事業の縮小・見直し・外注化」で対応する傾向が3割超(31.6%)と、21人以上の企業より多くなっています。小さな会社ほど、省力化に手が回っていないということでもあります。ここから、3つの見直しをご提案します。

1. 事業場ごとに「発効日」と対象者リストを作る

まず事務的な確認です。拠点ごとに、適用される金額・発効日・下回る可能性のある従業員を一覧にしてください。時給者だけでなく、月給者の時間換算額も確認対象です。月給を所定労働時間で割った額が最低賃金を下回っていないか、この機会に点検しておきましょう。

2. 時間のかかっている作業を「分」で棚卸しする

次に、単価ではなく時間に目を向けます。請求書の作成、勤怠の集計、経費精算の突き合わせ、問い合わせメールの一次返信——こうした作業に、月あたり何分かかっているかを書き出してみてください。時給が上がるということは、同じ作業にかかるコストも上がるということです。これまで「まあ手作業でいいか」で済んでいた業務の損益分岐点が、今回の改定で動いています。

3. 削った時間を「何に使うか」を先に決める

3つ目が、いちばん抜けやすい点です。作業時間を減らせたとして、その時間を接客に回すのか、新しい商品の準備に充てるのか、残業を減らすのか。先に決めておかないと、空いた時間は別の雑務で埋まります。省力化は目的ではなく、手元の時間を選び直すための手段です。設備やシステムへの投資を検討する場合は、省力化投資補助金の第8回受付について整理した記事もあわせてご覧ください。

よくある失敗:時給表だけ直して終わりにしてしまう

いちばん多いのが、「時給表を書き換えて対応完了」としてしまうケースです。改定は毎年あります。単価を上げるたびに利益が削れる構造をそのままにしておくと、来年また同じ痛みが来ます。

もうひとつは、逆に大きく構えすぎる失敗です。「基幹システムを入れ替えないと無理だ」と考えて、結局何も動かないまま数年が過ぎる。最初の一歩は、月に30分でも確実に減る作業を1つ選ぶことで十分です。減った実感がないと、社内の協力は続きません。

そして、発効日の確認漏れにもご注意ください。他県の拠点だけ改定が11月で、対応を忘れてしまう——これは規模の小さい会社ほど起こりがちです。

まとめ

  • 令和8年度の地域別最低賃金は全国加重平均1,177円(56円の引上げ)で、47都道府県の引上げ額は54円〜65円です。
  • 発効日は令和8年10月1日から12月2日までの間に順次で、全国一律ではありません。事業場ごとの確認が必要です。
  • 社会保険の賃金要件(月額8.8万円以上)は撤廃が決まっており、改定後はすべての都道府県で最低賃金が判断の目安とされる1,016円を上回ります。
  • 人手不足への対策として「デジタル活用等による省力化」を挙げる企業は約4割ですが、規模が小さいほど手が回っていない実態があります。
  • 単価だけを直すのではなく、作業時間の棚卸しと「空いた時間の使い道」まで決めることが、来年以降の余裕をつくります。

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本記事は、厚生労働省の発表「全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」および日本商工会議所「多様な人材の活躍等に関する調査」などを参考に、AI STARTの視点で独自に再構成したものです。